手根管症候群
1. 手根管症候群とは
手根管とは、手関節部分にある手根骨と横手根靱帯で囲まれた伸縮できないトンネルのことで、その手根管の中を正中神経と指を動かす9本の腱が走っています。手根管症候群とは、正中神経が手関節にある手根管というトンネル内で圧迫されることによる正中神経麻痺です。
2. 交通事故による原因
手根管神経症候群の原因は様々ですが、交通事故の場合には、橈骨遠位端骨折、特に
コーレス骨折や月状骨脱臼、フォルクマン拘縮等によっても発症します。
【コーレス骨折とは?】
橈骨の遠位骨片が手の甲の方に転位して、フォークを伏せたような形に変形した場合の骨折をいいます。
手のひらをついて倒れた際に起こす骨折です。
【月状骨脱臼とは?】
月状骨脱臼とは、有頭骨と尺骨の端部間に位置する骨に大きな力が加わることによって生じるものです。
自動車の衝突事故によって生じたり、伸ばした手から落ちたことによって生じます。
【フォルクマン拘縮とは?】
腕の骨折をはじめとした外傷によって生じる合併症のことです。
外傷によって著しい腫れが生じると深部動脈の血行が妨げられ、前腕部の筋肉や神経への血流が遮断されます。それにより、変形や壊死が生じ、フォルクマン拘縮を発症します。
3. 症状
初期には、中指にしびれや痛みを発症します。
最終的には、拇指(親指)から環指(薬指)の拇指側3本半の指がしびれます。
急性期には、このしびれや痛みは明け方に強く出て、目を覚ますと手がしびれ、痛むということが多くあります。
また、手を振ったり、指を曲げ伸ばししたりするとしびれが出ますが、手を振ることで痛みは楽になります。
さらに、ひどくなると拇指(親指)と示指(人差し指)でOKサインを作った際、きれいな丸ができず、涙のしずくのような形になります。
縫物がしづらくなり、細かいものがつまめなくなることもあります。
手の形は、猿手状に変形します。
4. 診断
上記症状を発症した際、下記に挙げる様々な検査によって傷病名が特定されます。
・手のひらの関節部をゴムハンマーで叩く。
→示指(人差し指)と中指がしびれ、痛みが響く:チネルサイン(陽性)
・手の指を下に向け手首を直角に曲げて手の甲を合わせた状態を1分程保つ。
→正中神経領域(拇指から環指の拇指側3本半部分)にしびれや疼痛を発症する。
:ファレンテスト(陽性)
・拇指球の筋力低下や筋萎縮を診る。
・筋電図検査
・手根管を挟んだ正中神経の伝導速度検査
・エコー検査
・MRI検査
5. 治療
① 症状が軽度な場合には、保存療法が中心となります。
→手首の安静、ビタミンB12や消炎鎮痛剤の服用、塗布薬、装具(シーネ)による局所の固定(主に夜間)
② 痛みが強い場合には、手根管内腱鞘内注射(ステロイド注射)が行われます。
③ 保存療法では改善しない場合や拇指球筋がやせた場合、さらに腫瘤があるものは、手根管開放術が適用されます。
この手術方法は、以前は手掌から前腕にかけて大きな皮膚切開を用いるというものでしたが、現在は、内視鏡を用いた鏡視下手根管開放術や、小皮切による直視下手根管開放術が行われています。
④ 拇指(親指(拇指)や人差し指(示指)の知覚は、日常生活で重要な働きをしていますので、これをカバーするため、小指の神経と皮膚を拇指(親指)に移植・神経血管柄付き島状皮膚移植がなされることもあります。
6. 後遺障害等級について
手関節の機能障害として、
→10級10号
4の手指の用廃として、
→8級4号
⇒【10級10号と8級4号を併合して7級】
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