後遺障害事例

ACL前十字靱帯損傷(えーしーえるぜんじゅうじじんたいそんしょう)

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1.前十字靱帯損傷とは

交通事故が原因で、前十字靱帯損傷という傷病になってしまうことがあります。

膝関節は、太ももとすねの骨を連結している関節ですが、ここには「内側側副靭帯」「外側側副靭帯」「前十字靭帯」「後十字靭帯」という4種類の靭帯があります。

内側側副靱帯と外側側副靭帯は、上下の骨が左右の横方向にずれることを防止しており、前十字靱帯と後十字靭帯は、骨が前後方向にずれることを防止しています。

 

そして、前十字靭帯は、大腿骨の外側部と𦙾骨の内側部をつないでいる靱帯であり、𦙾骨が前方向にずれることを防止しています。4つの靱帯の中でも、膝関節の安定性を維持するためにもっとも重要なものです。

 

前十字靱帯は、膝を伸ばしていると緊張して張った状態になります。交通事故の場合には、被害者が膝を伸ばして踏みとどまろうとしているときに、外力によって膝を捻ると、損傷しやすいです。

また、交通事故で前十字靱帯を損傷するのは、バイク運転中のケースが多いです。ほとんどの場合、前十字靱帯が断裂して、被害者はその瞬間に「ブチッ」という何かが切れるような音を感じます。

 

2.症状と診断、治療

前十字靱帯が切れると、関節内に大量出血が起こり、患部が腫れ上がります。

 

2-1Lachmanテスト

診断をするときには、「lachmanテスト」を実施します。

靱帯が断裂すると、前方向へのずれが防止されないので、膝がグラついてしまいます。その揺れの状態や程度、特性を確認するのが、lachmanテストです。

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lachmanテストを実施するときには、患者の膝を1520度曲げさせて、前方向へと引き出します。

前十字靭帯が断裂していると、𦙾骨が前方へ異常に引き出されるので、判定できます。

 

2-2.画像撮影

lachmanテストにより、前十字靱帯損傷の大まかな診断ができますが、より詳しく損傷の程度を調べるためには、レントゲン撮影やCTスキャン、関節造影やMRI撮影を実施します。中でも、ストレスXP撮影が重要です。

 

ストレスXP撮影

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前十字靱帯損傷が疑われる場合、𦙾骨を前方に引き出して、ストレスをかけた状態でレントゲン撮影をします。

前十字靱帯が断裂していると、𦙾骨が前方に引っぱり出された状態が写ります。

後遺障害認定申請の際、医師に後遺障害診断書の作成を依頼するときには、「脛骨の〇mmの前方引き出しを認める」などと、具体的な長さを記載してもらう必要があります。

 

2-3.関節鏡による検査

関節鏡を使うと、直接、前十字靱帯損傷や半月板の損傷状態を目で見て確認できます。

 

2-4.治療方法

交通事故で前靱帯損傷となった場合、まず、受傷直後の段階では、膝を固定して患部を氷水で冷やします。これをアイシングと言いますが、アイシングは膝全体に対して34日間継続します。

 

前十字靱帯が一度断裂すると、基本的に自然には元に戻らないのですが、軽傷のケースでは、保存的治療によって、大腿四頭筋やハムストリング筋などを強化する治療方法があります。

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これに対し、先ほど紹介した脛骨の前方引き出しテストにおいて、すねが太腿より前まで引き出されるような重傷のケースでは、手術が必要です。放っておくと、膝崩れが頻繁に起こりますし、半月板損傷にもつながるためです。

実施するのは靭帯を再建術ですが、この手術を実施する場合、まずは事故後1ヶ月程度安静にして、可動域訓練を行います。そして、半腱様筋腱、薄筋腱、膝蓋腱という組織の中央部分3分の1程度を採取し、前十字靭帯をつないで再建します。つまり、移植手術です。手術後は812ヶ月程度、リハビリが必要です。

また、事故後46週間くらいが経過して、痛みや腫れが引いてから、関節鏡を使って靭帯再建術を行うこともあります。

 

交通事故で前十字靱帯損傷となり、ストレスXP撮影によって10㎜以上の動揺性が確認される場合は重症例です。この場合の手術は極めて専門的で、高度な技術が必要ですので、膝関節外来があって、膝の専門医が在籍している病院を探して受診すべきです。

 

 

3ACL前十字靱帯損傷における後遺障害のポイント

 

3-1.後遺障害が残りやすいケース

交通事故で前十字靱帯損傷となったとき、後遺障害が残りやすいのは、本来は外科手術すべきなのに、見過ごされて保存療法しか行われなかった場合です。

この場合、膝関節が大きく動揺し、日常生活や労働において重大な支障が発生します。

通常歩行するときに、常時、装具が必要になる場合には、1関節の用廃となって87号の認定となります。

 

3-2.放置されて陳旧性となった場合

交通事故で前十字靱帯を損傷して時間が経過してしまい、陳旧性となってしまうと、外科手術をしても改善できるとは限りません。

また、再建術では半腱様筋腱、薄筋腱、膝蓋腱の中央部3分の1を採取して移植しなければなりませんが、そうすると、8か月以上仕事を休業しなければなりませんし、保険会社が手術費を負担しない可能性も高くなります。

そこで、放置されて陳旧性となってしまったなら、先に症状固定して、後遺障害等級認定を申請することを推奨しています。手術については、仕事の都合を合わせて勤務先の了解を得てから、示談後に実施するかどうかを選択します。

 

3-3.認定される後遺障害の等級

前十字靱帯損傷で認定される可能性のある後遺障害の等級は、以下の通りです。

  • 常時、装具が必要になった場合には87
  • 常時、固定装具を装着する必要性がない場合には1011
  • 重激な労働をする際にのみ固定装具が必要になるケースでは127

 

3-4.レントゲン撮影の重要性

前十字靱帯損傷の後遺障害を立証するためには、ストレスXP撮影が非常に重要です。

弁護士としてのこれまでの取扱い事例による経験則では、58mmの動揺性が確認できれば127号、810mmであれば1011号、12mm以上であれば87号となることが多いです。

ストレスXP撮影によって動揺が立証されないと、12級以上の認定を受けることは難しくなります。

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