後遺障害事例

骨盤骨折に伴う出血性ショック

骨盤骨折に伴う出血性ショックとは、「骨盤を骨折したことによって大量に出血をして、主要な臓器に必要な血流が維持できなくなり、細胞機能が保てなくなる」という症候群です。

出血性ショックを引き起こして死亡する例は、珍しくありません。骨盤骨折の死因の50%は出血であると報告されています。

骨盤骨折に伴う出血性ショックを発症した場合は、ただちに輸液・輸血を行います。輸液・輸血をしても血圧が上昇しないときは、早急に内腸骨動脈造影(ないちょうこつどうみゃくぞうえい)を実施します。

手術を行う場合は、血管塞栓術(けっかんそくせんじゅつ)という術式が実施されます。血管塞栓術とは、出血している血管を閉塞する方法です。血管塞栓術の合併症として、男性の場合は勃起障害が生じる可能性があります。女性の場合は合併症のリスクはありません。

 

 

(1)症状

骨盤骨折による出血性ショックを発症した場合、一般的には血圧が低下します。ただし、血圧が低下する前下記のような症状が出ることがあります。

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上記のような症状が出た場合は、出血性ショックを発症するおそれがあります。血圧が下がり始める前に、出血性ショックの有無を判断したうえで迅速な処置を行い、適切な病院へ搬送しなければいけません。

つまり、交通事故で骨板を骨折した場合は、血圧の測定以外にも、「顔色」「呼吸」「脈拍」「皮膚」を観察して、出血性ショックを示唆するサインが出ているかどうかを検査する必要があります。

初期症状としては、脈拍数が増加して、皮膚が冷たくなり、冷や汗が出るというのが代表的です。このような症状が出た場合は、血圧が低下していないときでも、出血性ショックの可能性があります。急いで専門病院へ搬送しなければいけません。

 

 

(2)骨盤骨折の検査

骨盤骨折の検査は、触診によって行われます。医師が骨折した部位を触診することによって、圧痛(あっつう)や動揺性がないかを検査します。

圧痛や動揺性がある場合は、骨盤を骨折している可能性が高くなるため、骨盤部XP(レントゲン)撮影を行います。仙骨骨折(せんちょうこっせつ)や仙腸関節離開(せんちょうかんせつりかい)の疑いがある場合は、CT(スキャン)を行います。

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血尿がある場合は、尿道造影(にょうどうぞうえい)膀胱造影(ぼうこうぞうえい)を行います。肛門出血がある場合は、注腸造影(ちゅうちょうぞうえい)によって検査を行います。

 

 

(3)治療

骨盤骨折に伴う出血性ショックは、以下の3つのケースに分類して治療方法が決定されます。

まず第1に、内腸骨動脈(ないちょうこつどうみゃく)を損傷したことによる出血性ショックのケースでは、塞栓術(そくせんじゅつ)が実施されます。塞栓術とは、出血している血管を閉塞する方法です。コイルなどを用いて出血している動脈を詰めるという方法が一般的です。

第2に、膀胱(ぼうこう)損傷や大腸損傷などの合併症が生じているケースでは、緊急手術が実施されます。

第3に、不安定な骨盤骨折のケースでは、局所麻酔下で創外固定(そうがいこてい)を実施します。創外固定とは、身体の外側から骨折した部位を固定する方法です。

 

 

(4)骨盤骨折に伴う後遺障害

骨盤を損傷した場合の後遺障害は、主に3種類あります。

 

  (A)疼痛(とうつう)、可動域制限、下肢(かし)の短縮

  (B)骨盤輪内に収納されている臓器の損傷

  (C)内腸骨動脈(ないちょうこつどうみゃく)などの血管の損傷

 

骨盤骨折の後遺障害としてもっとも多いのは、(A)です。

(A)については(5)で詳しく説明します。

出血性ショックを発症するような重症なケースでは、(B)の後遺症が生じることがあります。(B)については(6)で説明します。

 

 

(5)疼痛(とうつう)、可動域制限(かどういきせいげん)、下肢(かし)の短縮

まず、「疼痛(とうつう)」です。

疼痛(とうつう)などの神経症状が残った場合は、痛みそのものを理由として、後遺障害等級14級9号に認定される可能性があります。痛みが激しい場合は、後遺障害等級12級13号の対象となります。

痛みを後遺障害として申請する場合は、骨折部の3DCT(スキャン)やXP(レントゲン)を撮影して骨癒合の状況を立証する必要があります。症状によっては、MRIによる立証が必要となります。

いずれの資料を用いて立証するべきかは、被害者の症状によってケースバイケースです。症状によっては、CT(スキャン)が有利な証拠となる場合もあれば、MRIが有用な証拠となる場合もあります。

ご自身の症状に即した具体的なアドバイスをお聞きしたいという方は、当事務所までご相談ください。カルテなどの医療記録をお持ちいただければ、当事務所の弁護士が責任を持って後遺障害を申請する際のポイントについてご説明いたします

 

次に、「可動域制限(かどういきせいげん)」です。

「可動域制限(かどういきせいげん)」とは、股関節(こかんせつ)が動く範囲が制限されてしまうことです。このように関節が自由に動かなくなる後遺症のことを、「機能障害(きのうしょうがい)」と呼びます。

股関節に機能障害が生じた場合は、その程度によって後遺障害の等級が変わります。

股関節の機能が完全に失われた場合は、後遺障害等級8級7号の対象となります。関節の機能が完全には失われていないものの、障害の程度が著しい場合は、後遺障害等級10級11号の対象となります。障害が比較的軽微である場合は、後遺障害等級12級7号の対象となります。

可動域制限(かどういきせいげん)を後遺障害として申請する際には、股関節の関節の動く角度を計測して、その角度を後遺障害診断書に記載します。

通常は、病院で股関節の角度を計測してもらいます。ただし、病院での計測は、医学的な観点によって行われますが、法律的な観点によって行われることはありません。示談手続きに重要な計測を全て行わない可能性があります。

このため、股関節の可動域制限を後遺障害として申請する場合は、病院で計測を行う前に、交通事故に精通した弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。交通事故に精通した弁護士にご相談していただければ、後遺障害診断書を作成する際のポイントについて法律的な観点からアドバイスをいたします。

 

最後に、「下肢(かし)の短縮」です。

骨盤を骨折したことによって下肢が短縮した場合は、後遺障害として申請することができます。下肢とは「脚」のことです。

後遺障害等級は、下肢が短縮した度合いによって決定されます。

下肢が1センチ以上短縮した場合は、後遺障害等級13級8号の対象となります。3センチ以上短縮した場合は、後遺障害等級10級8号の対象となります。5センチ以上短縮した場合は、後遺障害等級8級5号の対象となります。

なお、大腿骨(だいたいこつ)や下腿骨(かたいこつ)が短縮していないケースであっても、後遺障害として認定される可能性があります。交通事故が原因となって骨盤骨に歪み(ゆがみ)が生じているケースについては、その歪みによって下肢が短縮していることを立証することができれば、後遺障害に認定される可能性があります。

ただし、このような立証は医学的にも法律的にも難しい手続きとなります。骨盤の歪み(ゆがみ)による下肢(かし)の短縮でお悩みの方は、交通事故に精通した弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

 

 

(6)骨盤骨折によって内蔵を損傷した場合の後遺障害

骨盤骨折によって内蔵を損傷した場合は、後遺障害として 尿管、膀胱および尿道の障害 排尿障害 生殖器の障害、が生じる可能性があります。

下記では、からの内容を順番に説明していきます。

 

①尿管(にょうかん)、膀胱(ぼうこう)および尿道(にょうどう)の障害

腎臓(じんぞう)で生成された尿は、尿管(にょうかん)を経て膀胱に蓄積されて、尿道を通じて体外に排尿されます。この経路を尿路(にょうろ)といいます。

健康な状態の膀胱(ぼうこう)には、2つの機能があります。「尿を失禁することなく安定して貯める」という畜尿機能と、「尿意に基づいて自分の意思で残尿なく排出する」という排尿機能です。

このような膀胱(ぼうこう)の機能に障害が生じた場合は、後遺障害の対象となります。具体的には、下記の表のとおりです。

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「非尿禁制型尿路変更術(ひにょうきんせいがたにょうろへんこうじゅつ)」とは、排泄口から流れ出る尿を袋で集尿するという手術方法です。

「禁制型(きんせいがた)尿リザボア」は、腸管(ちょうかん)を使用して体内に畜尿可能なパウチを作成するという手術方法です。

 

②排尿障害

骨盤の骨折によって排尿の機能に障害が残った場合は、後遺障害の対象となります。具体的には、下記の表のとおりです。

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膀胱(ぼうこう)の蓄尿量は、およそ200~300ミリリットルです。一般的な成人であれば、150ミリリットル蓄積されると軽い尿意を感じ、250ミリリットル蓄積されると強い尿意を感じます。

成人の平均としては、排尿は1日1500ミリリットル、昼間に起きているときに4〜5回、夜間に就寝しているときに0〜2回、合計7回です。頻尿(ひんにょう)とは、昼間に8回以上、夜間に3回以上の排尿をする状態です。

なお、腹圧性(ふくあつせい)尿失禁とは、くしゃみなどの生理的な反射階段の昇り降りなどの動作によってお腹に力が加わったときに、尿失禁することを指します。

これに対して、切迫性(せっぱくせい)尿失禁とは、前ぶれなく突如として尿がしたくなり、その尿意が急であるためトイレまで間に合わなくて失禁してしまうという症状です。

排尿に関する後遺障害は、泌尿器科(ひつにょうきか)におけるウロダイナミクス検査によって立証を行います。

ウロダイナミクス検査とは、排尿時の膀胱(ぼうこう)、膀胱内圧(ぼうこうないあつ)・排尿筋圧測定(はいにょうきんあつそくてい)と尿道、尿道括約筋筋電図(にょうどうかつやくきんきんでんず)の働きを同時に記録することにより、排尿障害の病型を診断する検査です。

ウロダイナミクス検査では、蓄尿から排尿終了までの間の膀胱内圧(ぼうこうないあつ)、腹圧(ふくあつ)、排尿筋圧(はいにょうきんあつ)、外尿道括約筋活動(がいにょうどうかつやくきんかつどう)、尿流(にょうりゅう)などを測定することができます。このため、排尿障害の部位や程度を総合的に診断することができます

検査で実施する測定項目は、専門医の診断により選定されます。具体的には、下記の表のとおりです。

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排尿障害を後遺症として申請する際には、立証資料として「膀胱内圧検査(ぼうこうないあつけんさ)」が重要となります。これは、排尿機能に障害があることを示す検査です。

しかし、多くの泌尿器科(ひつにょうきか)では膀胱内圧検査(ぼうこうないあつけんさ)を行いません。膀胱内圧検査は、症状を治療するために不可欠な検査ではないからです。

しかし、医学的には不要な検査であっても、交通事故の示談の際には非常に重要な資料となります。このため、排尿障害を後遺障害として申請する場合は、泌尿器科で検査を行う前に、交通事故に精通した弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。交通事故に精通した弁護士にご相談していただければ、示談手続きに必要となる資料について法律的な観点からアドバイスをいたします。

病院での計測は、医学的な観点によって行われますが、法律的な観点によって行われることはありません。交通事故の示談手続きを行ううえでは、法律的な視点が重要となります。当事務所では、治療中の方からのご相談も受け付けておりますので、排尿障害でお悩みの方はお気軽にご相談ください。カルテなどの医療記録をお持ちいただければ、当事務所の弁護士が責任を持って法律的なアドバイスをいたします。

 

③生殖器の障害

交通事故で骨盤を損傷して生殖器の機能に障害が生じた場合は、後遺障害の対象となります。具体的には、下記の表のとおりです。

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後遺障害として勃起障害の等級認定を受けるためには、以下の条件を全てみたさなければいけません。

・リジスキャンRによる夜間陰茎勃起検査によって「夜間睡眠時に十分な勃起が認められないこと」が医学的に証明されていること

・「肛門括約筋(こうもんかつやくきん)のトーヌスおよび球海綿反射筋反射(きゅうかいめんはんしゃきんはんしゃ)による神経系検査」「会陰部の知覚」「プロスタグランジンE1海綿体注射による各種の血管系検査」のいずれかの検査によって、「支配神経の損傷等勃起障害の原因となる所見」が認められること

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 会陰部の知覚    肛門括約筋の随意収縮   球海綿体筋反射

 

 

(7)後遺障害を申請する際のポイント

骨盤骨折の後遺障害認定の申請では、「どのような資料をそろえるか」ということが重要となります。提出する資料によって賠償金が大きく変わる可能性があるからです。

必要となる資料は、個人の症状によってケースバイケースです。どのような資料をそろえればよいのか分からないという方は、当事務所までご相談ください。当事務所では、弁護士が被害者の方の症状を分析したうえで、立証が不十分となる可能性がある点について具体的にアドバイスをいたします。

 

後遺障害が認められるかどうかは、症状によってケースバイケースです。少しでも有利に交渉を進めるためには、交通事故に精通した弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。当事務所では、福岡を始めとして九州、全国の方からたくさんの交通事故のご相談やご依頼に来ていただいております。社内における交通事故の研修を行うなど、交通事故に関する知識の向上にも努めております。

「自分の症状が後遺障害に該当するのか分からない」という方でも、お気軽に当事務所までご相談ください。ご相談の際に診断書(カルテ)やXP(レントゲン)などの資料を持ってきていただければ、弁護士が責任を持って資料を精査して、適切な認定結果を得ることができるようにアドバイスをいたします。

 

アジア総合法律事務所では、治療中の方からのご相談も受け付けております。「まだ弁護士に依頼するかどうか迷っている」という方も大歓迎です。交通事故のご相談は無料で受け付けておりますので、ご予算をご心配なさる必要もありません。

弁護士には守秘義務が課されておりますので、ご相談の内容が外部にもれることもありません。骨盤骨折の後遺症でお悩みの方はどうぞ安心してご相談ください。

 

当事務所には、年間約200件にのぼる交通事故・後遺障害のご相談が寄せられます。
多くは福岡県内の方ですが、県外からのご相談者もいらっしゃいます。

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