後遺障害事例

股関節後方脱臼・骨折(こかんせつ こうほう だっきゅう・こっせつ)

股関節後方脱臼・骨折(こかんせつこうほうだっきゅう・こっせつ)とは、「股関節の背中側の部位を脱臼・骨折すること」です。

脱臼とは、「関節が外れて、骨が正常な位置からずれてしまう状態」のことです。骨折とは、「骨自体が損傷を受けた状態」です。つまり骨折とは、骨が折れたり、骨にひびが入った状態を指します。脱臼の場合は、骨自体に損傷はありません。

交通事故では、膝(ひざ)がダッシュボードに打ちつけられることによって、股関節後方脱臼・骨折を発症することが多いといわれています。このため、「ダッシュボード・インジャリー(dashboard injury)」とも呼ばれます。

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運転席や助手席に座っているときに、膝を曲げた状態のままダッシュボードに打ちつけると、大腿骨(だいたいこつ)が後方に押し上げられます。このとき、大腿骨(だいたいこつ)が関節包(かんせつほう)を突き破ることによって、股関節の後方を損傷します。

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股関節を脱臼すると、多くのケースでは寛骨臼(かんこつきゅう)も骨折します。寛骨臼とは、大腿骨頭(だいたいこっとう)が収まっている部分です。

 

(1)症状

股関節後方脱臼・骨折を発症すると、損傷した部位に痛みや腫れ(はれ)が生じます。脱臼している場合は、股関節が異常な方向に動くことがあります。

 

(2)治療

単純XP(レントゲン)を撮影すると、大腿骨頭(だいたいこっとう)が寛骨臼(かんこつきゅう)から外れていることが確認できます。

脱臼と骨折を合併しているケースでは、骨折している寛骨臼(かんこつきゅう)をスクリューで固定します。このような場合、骨折片が坐骨神経(ざこつしんけい)を圧迫し、坐骨神経麻痺(ざこつしんけいまひ)を引き起こすリスクがあります。

脱臼のみのケースでは、外れた大腿骨頭を寛骨臼にはめ込むことによって治療を行います。

 

(3)大腿骨頭の損傷

大腿骨頭(だいたいこっとう)は、3本の血管によって栄養を送り込まれています。脱臼によってこの血管を損傷すると、大腿骨頭に栄養や酸素が供給されなくなり、大腿骨頭が壊死するおそれがあります。

股関節を脱臼したケースでは、24時間以内に整復しないと大腿骨頭が壊死するリスクが高まります。つまり、股関節を脱臼した場合は、迅速に治療をすることが非常に重要です。

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大腿骨頭が壊死した場合、大腿骨頭部を切断して人工骨頭(じんこうこっとう)を埋め込まなければいけません。これを「大腿骨頭置換術(だいたいこっとうちかんじゅつ)」と呼びます。

損傷が激しい場合は、骨頭(こっとう)を置換するだけにとどまらず、人工関節を埋め込まなければいけません。

人工骨頭や人工関節のリスクを防止するためには、交通事故に遭った後にできる限り迅速に整復固定をしなければいけません

骨折を伴わないケースでは、受傷から12時間以内に治療をすることが必要です。骨折を伴うケースであっても、受傷から24時間以内に整復を実施すれば、予後は良好だといわれています。

なお、人工骨頭や人工関節を置換した場合、耐久性はおよそ10年であると説明されることがあります。しかし、医療技術の発達によって、人工骨頭や人工関節の耐久性は年々長くなっています。

人工骨頭については、セラミックが普及してきたため、通常の生活をしていれば耐久性は20年以上であるといわれています。人工関節についても、材質がポリエチレンから超高分子量ポリエチレンに変化しており、耐久性はめざましく進化しています

 

(4)後遺障害

股関節後方を脱臼・骨折した場合、後遺症として「股関節の可動域制限(かどういきせいげん)」、「下肢(かし)の短縮」、「損傷部の痛み」が生じる可能性があります。

 

①股関節の可動域制限

「可動域制限」とは、股関節が動く範囲が制限されてしまうことです。このように関節が自由に動かなくなる後遺症のことを、「機能障害(きのうしょうがい)」と呼びます。

股関節に機能障害が生じた場合は、その程度によって後遺障害の等級が決まります

股関節の機能が完全に失われた場合は、後遺障害等級8級7号の対象となります。関節の機能が完全には失われていないものの、障害の程度が著しい場合、後遺障害等級10級11号の対象となります。障害が比較的軽微である場合、後遺障害等級12級7号の対象となります。

人工骨頭や人工関節を置換したケースでは、後遺障害等級10級に認定される可能性が高くなります。

 

②下肢(かし)の短縮

股関節後方を脱臼・骨折したことによって下肢の短縮が認められるときは、後遺障害の対象となります。下肢とは「足」のことです。

後遺障害等級は、下肢が短縮した度合いによって決定されます。

下肢が1センチ以上短縮した場合は、後遺障害等級13級8号の対象となります。3センチ以上短縮した場合は、後遺障害等級10級8号の対象となります。5センチ以上短縮した場合は、後遺障害等級8級5号の対象となります。

なお、大腿骨(だいたいこつ)や下腿骨(かたいこつ)が短縮していないケースであっても、後遺障害として認定される可能性があります。股関節後方を脱臼・骨折したことによって骨盤骨に歪み(ゆがみ)が生じているケースについては、その歪みによって下肢が短縮していることを立証することができれば、後遺障害に認定される可能性があります。

ただし、このような立証は医学的にも法律的にも難しい手続きとなります。骨盤の歪みによる下肢の短縮でお悩みの方は、交通事故に精通した弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

 

③痛み

交通事故でケガをした部位に痛みが残った場合は、痛みそのものを理由として後遺障害を申請することができます。

痛みや痺れ(しびれ)などの神経症状は、後遺障害等級14級9号に認定される可能性があります。痛みが激しい場合は、後遺障害等級12級13号の対象となります。

痛みを後遺障害として申請する場合は、骨折部の3DCT(スキャン)やXP(レントゲン)を撮影して骨癒合の状況を立証する必要があります。

3DCT(スキャン)やXP(レントゲン)によって症状を十分に説明することができない場合であってもMRIによって症状を立証することができる場合があります。

XP(レントゲン)やCT(スキャン)で立証するかMRIで立証するかは、被害者の症状によってケースバイケースです。症状によっては、XP(レントゲン)が有利な証拠となる場合もあれば、MRIが有用な証拠となる場合もあります。

適切な資料を提出しなければ、適切な後遺障害等級の認定を受けることができません。適切な認定を受けることができなければ、適切な示談金を受け取ることはできません。

後遺障害等級として何級に認定されるかによって、示談金は大きく変わります。個別事案によって金額は異なりますが、弁護士が交渉した場合は、後遺障害等級14級のケースではおよそ250万~300万円程度、12級であればおよそ500万~1,000万円程度の賠償金額となる可能性があります。

 

後遺障害としてどのような申請を行うべきかは、被害者の症状に即して臨機応変に判断しなければいけません。当事務所にご相談していただければ、症状を具体的に分析したうえで、お客様の状況に即して法律的な観点からアドバイスいたします。

アジア総合法律事務所では、日頃から交通事故の解決に力を入れており、数多くの交通事故・後遺障害の案件を取り扱った実績があります。福岡を始め、九州、全国からから交通事故のご相談やご依頼をいただいております。股関節の後遺症でお悩みの方は、当事務所までお気軽にご連絡ください。

 

(5)弁護士に依頼することの重要性

股関節に関する後遺障害を申請する場合は、病院で後遺障害診断書を作成する前に、交通事故に精通した弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。

後遺障害を申請する際には、病院で後遺障害診断書を作成しなければいけません。たとえば、可動域制限(かどういきせいげん)を後遺障害として申請する際には、病院で股関節の関節の動く角度を計測して、その角度を後遺障害診断書に記載します。

股関節の主要運動は、「屈曲」「伸展」「外転」「内転」です。このため、多くの病院ではこの4種類を計測するだけで終了となります。

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しかし、症状によっては参考運動である「外旋」「内旋」にも注意を向ける必要があります。これらの計測の結果が後遺障害の審査の際に被害者にとって有利となる場合があるからです。

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このため、股関節の可動域制限を後遺障害として申請する場合は、病院で計測を行う前に、交通事故に精通した弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。

病院での計測は、医学的な観点によって行われますが、法律的な観点によって行われることはありません。当事務所にご相談していただければ、後遺障害診断書を作成する際のポイントについて法律的な観点からアドバイスいたします。

 

(6)症状固定の時期

股関節後方を脱臼・骨折した場合、一般的にはおよそ6ヶ月ほどで治療は終了となります。交通事故から6ヶ月以内に治療が終了すれば、機能障害の等級認定を受けることができる可能性は高くなります。

症状が深刻なケースでは、完治するまでに6ヶ月以上かかる場合があります。このようなケースでは、「いつ症状固定とすればよいのか」という判断が難しくなります

症状固定とは、「これ以上治療を続けても症状が良くならないため、ここで治療を終了とする」ということです。

いつ症状固定とするかによって、損害賠償金が変わることがあります。後遺障害の等級は、「症状固定時の骨の状態」によって決まるからです。

治療を長く行った場合、症状固定の時期が遅くなるため、後遺障害の審査の際に不利となる可能性があります。一方で、症状固定の時期を早まってしまうと、治療の期間が短くなるため、治るはずの症状が十分に改善しないかもしれません。どちらを選択するべきかは、個別の症状によって異なります。

「いつまで治療を行うのか」というのは重要な問題です。主治医と十分に話し合ったうえで、慎重に決定しましょう。

主治医と相談しても決断できないとお悩みの方は、当事務所にご相談ください。弁護士が個別の症状をお聞き取りしたうえで、症状に即して法律的なアドバイスを行います。当事務所では、治療中の方からのご相談も承っております。

「いつ症状固定とするべきか」は、被害者の症状によってケースバイケースです。お悩みの方は主治医や弁護士と十分にご相談したうえで、慎重に判断しましょう。

 

(7)股関節脱臼の種類

股関節の脱臼には、「後方脱臼」以外にも「中心性脱臼」「前方脱臼」という種類があります。

前方脱臼とは、「股関節の正面側の部位を脱臼・骨折すること」です。前方脱臼した場合は、関節包(かんせつほう)の前面を損傷し、大腿骨頭(だいたいこっとう)の骨折や靱帯断裂(じんたいだんれつ)、大腿動脈損傷(だいたいどうみゃくそんしょう)、大腿神経損傷(だいたいしんけいそんしょう)を合併することが多いといわれています。

前方脱臼は重症なケースですが、交通事故のケースでは滅多に発生することはありません。

中心性脱臼については、次の項目で解説します。

当事務所には、年間約200件にのぼる交通事故・後遺障害のご相談が寄せられます。
多くは福岡県内の方ですが、県外からのご相談者もいらっしゃいます。

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