後遺障害事例

骨盤骨折の軽症例

今回は、骨盤骨折の中でも軽症なケースを紹介します。

骨盤骨折の軽症なケースとして、下記の3種類があります。

 

   腸骨翼(ちょうこつよく)の単独骨折

   恥骨(ちこつ)・坐骨(ざこつ)の単独骨折

   尾骨骨折(びこつこっせつ)

 

以下では、①②③を順番に解説します。

 

(1)腸骨翼骨折(ちょうこつよくこっせつ)

腸骨翼(ちょうこつよく)は、腰の両横にあります。ベルトを装着した際にひっかかる部分です。下記のイラストを見てください。の部分が腸骨翼です。

        151-3

腸骨翼は、前方、後方、側方から衝撃を受けることによって骨折します。腸骨翼骨折は、「ドーヴァネイ骨折」とも呼ばれています。

腸骨翼骨折の中でも大量出血を伴わないものは、軽症なケースに分類されます。

腸骨翼を骨折すると、入院をして安静にすることが必要となります。1週間ほど経過すると、歩行器を使用したリハビリが開始されます。1~2ヵ月ほどリハビリを行えば、後遺障害が生じることもなく順調に回復します

ただし、腸骨翼の単独骨折であっても、骨盤腔内に3000mlを超える大出血をきたす場合があります。このような大出血を伴うケースは、重症なケースに分類されます。このような重症なケースでは、出血性ショックに備えて全身管理を行うなど、慎重な対応が必要となります。

出血性ショックについては、「骨盤骨折に伴う出血性ショック」で解説しています。

 

(2)恥骨骨折(ちこつこっせつ)・坐骨骨折(ざこつこっせつ)

恥骨(ちこつ)や坐骨(ざこつ)は、前方からの外力や、下方からの外力によって骨折します。骨盤骨折の中で、もっとも頻度が高い部位です。

下記のイラストを見てください。骨盤を正面から描いた図です。が恥骨骨折で、が坐骨骨折です。

        151-3

自転車やバイクを運転しているときに出合い頭で衝突すると、お尻からどすんと落下することがあります。このようにお尻に直接外力が加わったときに、恥骨や坐骨を骨折することが多いといわれています。

恥骨や坐骨の片側だけを骨折したケースは、軽症なケースに分類されます。入院は必要ですが、手術に至ることはありません。多くの場合、投薬による治療が行われます。具体的には、鎮痛薬や非ステロイド性抗炎症薬、NSAID(解熱鎮痛薬)などが投与されます。

交通事故から1週間ほど経過すると、リハビリが開始されます。リハビリでは、歩行器を使用して短い距離を歩く訓練が行われます。さらに1~2ヵ月ほど経過すると、症状は全快します。多くの場合、後遺障害が生じることはありません

坐骨骨折の場合は、骨折した部位が下方にずれるため、股関節の伸展運動ができなくなります。交通事故の直後は自由に脚を動かすことができませんが、適切なリハビリを行えば元の状態まで回復します

恥骨骨折の中でも重症なケースになると、合併症として膀胱損傷(ぼうこうそんしょう)尿道損傷(にょうどうそんしょう)を発症することがあります。

 

(3)尾骨骨折(びこつこっせつ)

尾骨(びこつ)とは、仙骨(せんこつ)の下についている骨です。尻尾の名残であり、尾骶骨(びていこつ)とも呼ばれています。

下記のイラストを見てください。骨盤を正面から描いた図です。イラストの中央部に存在する三角形にとがっている骨が、尾骨です。

     150-1

交通事故の場合は、自転車やバイクから転げ落ちたときに骨折することが多いといわれています。

尾骨を骨折した場合、治療としては保存療法が行われます。保存療法とは、リハビリなどによって痛みをやわらげるという治療方法です。

下記のイラストを見てください。尾骨を横から描いた図です。左側のイラストは骨折する前の正常な状態で、右側のイラストは骨折後の状態です。

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上記のイラストから分かるように、尾骨は正常な状態においても弓なりに曲がっています。このため、骨折した際にXP(レントゲン)を撮影しても、骨折しているかどうかの判断が難しいといわれています。専門医でなければ、見逃してしまう可能性があります。骨盤付近に痛みを感じている場合は、医師にきちんと痛みを伝えて丁寧に検査してもらいましょう。

なお、上記のイラストの右図のように、尾骨が大きく屈曲変形をきたした場合は、後遺障害の対象となります。

尾骨が大きく屈曲変形したケースでは、女性の場合は正常産道を確保できなくなります。このため、将来的に赤ちゃんを出産することになった場合に、自然分娩を選択することができず、帝王切開を余儀なくされることになります。

このように、尾骨の屈曲変形は将来の出産に影響を及ぼす可能性があるため、後遺障害の対象となります。婦人科医の診断書によって屈曲変形を立証することができれば、後遺障害等級11級10号の対象となります。

 

 

(4)後遺障害

骨盤骨折の軽症なケースに共通する後遺障害として、股関節の可動域制限 下肢(かし)の短縮 疼痛(とうつう)の3種類があります。

 

①股関節(こかんせつ)の可動域制限(かどういきせいげん)

「可動域制限」とは、股関節の動く範囲が制限されてしまうことです。このように関節が自由に動かなくなる後遺症のことを、「機能障害(きのうしょうがい)」と呼びます。

股関節に機能障害が生じた場合は、その程度によって後遺障害の等級が変わります。

股関節の機能が完全に失われた場合は、後遺障害等級8級7号の対象となります。関節の機能が完全には失われていないものの、障害の程度が著しい場合は、後遺障害等級10級11号の対象となります。障害が比較的軽微である場合は、後遺障害等級12級7号の対象となります。

可動域制限(かどういきせいげん)を後遺障害として申請する際には、股関節の関節の動く角度を計測して、その角度を後遺障害診断書に記載します。

通常は、病院で股関節の角度を計測してもらいます。股関節の主要運動は、「屈曲」「伸展」「外転」「内転」です。多くの病院では、この4種類を計測するだけで終了となります。

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しかし、症状によっては参考運動である「外旋」「内旋」にも注意を向ける必要があります。これらの計測の結果が後遺障害の審査の際に有利となる場合があるからです。

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病院での計測は、医学的な観点によって行われますが、法律的な観点によって行われることはありません。このため、股関節の可動域制限を後遺障害として申請する場合は、病院で計測を行う前に、交通事故に精通した弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。

交通事故に精通した弁護士にご相談していただければ、後遺障害診断書を作成する際のポイントについて法律的な観点からのアドバイスが可能となります。

当事務所では、日頃から交通事故の紛争解決に力を入れており、交通事故の示談手続きについて豊富な実績と経験を積んでおります。股関節の機能障害でお悩みの方は、いつでもお気軽にご相談ください。

 

②骨盤の歪みを原因とする下肢(かし)の短縮

骨盤を骨折した影響で下肢(かし)が短縮した場合は、後遺障害の対象となります。下肢とは「脚」のことです。

後遺障害等級は、下肢が短縮した度合いによって決定されます。

下肢が1センチ以上短縮した場合は、後遺障害等級13級8号の対象となります。3センチ以上短縮した場合は、後遺障害等級10級8号の対象となります。5センチ以上短縮した場合は、後遺障害等級8級5号の対象となります。

なお、大腿骨(だいたいこつ)や下腿骨(かたいこつ)が短縮していないケースであっても、後遺障害として認定される可能性があります。骨盤骨に歪み(ゆがみ)が生じているケースについては、その歪みによって下肢が短縮していることを立証することができれば、後遺障害に認定される可能性があります。

ただし、このような立証は医学的にも法律的にも難しい手続きとなります。骨盤の歪みによる下肢の短縮でお悩みの方は、交通事故に精通した弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

 

③疼痛(とうつう)

交通事故でケガをした部位に痛みが残った場合は、痛みそのものを理由として後遺障害を申請することができます。

痛みや痺れ(しびれ)などの神経症状は、後遺障害等級14級9号に認定される可能性があります。痛みが激しい場合は、後遺障害等級12級13号の対象となります。

痛みを後遺障害として申請する場合は、骨折部の3DCT(スキャン)やXP(レントゲン)を撮影して骨癒合の状況を立証する必要があります。

3DCT(スキャン)やXP(レントゲン)によって症状を十分に説明することができない場合であってもMRIによって症状を立証することができる場合があります。

XP(レントゲン)やCT(スキャン)で立証するかMRIで立証するかは、被害者の症状によってケースバイケースです。症状によっては、XP(レントゲン)が有利な証拠となる場合もあれば、MRIが有用な証拠となる場合もあります。

 

 

 

適切な資料を提出しなければ、適切な後遺障害等級の認定を受けることができません。適切な認定を受けることができなければ、適切な示談金を受け取ることはできません。

後遺障害等級として何級に認定されるかによって、示談金は大きく変わります。個別事案によって金額は異なりますが、弁護士が交渉した場合は、後遺障害等級14級のケースではおよそ250万~300万円程度、12級であればおよそ500万~1,000万円程度の賠償金額となる可能性があります。

後遺障害としてどのような申請を行うべきかは、被害者の症状に即して臨機応変に判断しなければいけません。当事務所にご相談していただければ、症状を具体的に分析したうえで、お客様の状況に即して法律的な観点からアドバイスいたします。

アジア総合法律事務所では、日頃から交通事故の解決に力を入れており、数多くの交通事故・後遺障害の案件を取り扱った実績があります。福岡を始め、九州、全国から交通事故のご相談やご依頼をいただいております。骨盤骨折の後遺症でお悩みの方は、当事務所までお気軽にご連絡ください。

 

 

当事務所には、年間約200件にのぼる交通事故・後遺障害のご相談が寄せられます。
多くは福岡県内の方ですが、県外からのご相談者もいらっしゃいます。

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