頭部外傷による高次脳機能障害とは-1
頭部外傷による高次機能障害は、命に関わる重大な障害です。
通常、交通事故で頭部に外傷を受けると、救急車で病院に運ばれます。
IICU(集中治療室)で治療を受けることになり、家族の方も眠らずに付き添いを行います。
しかし、このように重大な怪我であっても、1年ほど経つと「症状固定」となります。
症状固定とは、「症状が完全には治ってはいないものの、これ以上治療を続けても症状が良くならない状態」のことです。
交通事故によって頭部にケガを負った場合、外見上の傷跡が完全に治ったとしても、
言語能力が低下したり、物忘れがひどくなることがあります。このような症状は、いくら治療を続けても、完全には回復しません。
このように一部の症状が残った状態のことを、「後遺障害」と呼びます。頭部外傷の場合は脳内の機能に後遺障害が残ることが多いので、このような後遺障害を「頭部外傷による高次機能障害」と言います。
後遺障害が残った場合、これ以上治療を続けても症状が良くなることはありません。反対に、治療を中断してもこれ以上悪くなることもありません。
症状固定の判断は、お医者さんが行います。お医者さんが「これ以上通院しても症状が良くならない」と診断すると、そこで治療は終了となります。
高次機能障害の場合は、事故から1年ほど経つと症状固定となります。
症状固定の診断が行われると、次は後遺障害の認定の手続きに入ります。
高次脳機能障害に認定されるための3要件
それでは、後遺障害の認定の手続きはどのように進んでいくのでしょうか?
頭部外傷の高次機能障害に認定されるためには、3つの要件があります。
(1)頭部外傷後に意識障害が起きたこと又は健忘症や軽度意識障害が存在すること
(2)頭部外傷を示す傷病名が診断されていること
(3)傷病名を画像で確認できること
今回は、(2)と(3)の要件について説明します。
(2)頭部外傷を示す傷病名が診断されていること
頭部外傷を示す傷病名には、下記の種類があります。
物忘れがひどくなったり、集中力が低下したり、食事をしていても匂いを感じなくなります。
これらの症状は、全て傷病名を出発点としています。症状を傷病名で説明することが必要なので、傷病名が診断されていることがポイントとなります。
なお、これらの傷病名は「診断書に記載されていること」が必要です。
お医者さんから口頭で言われただけでは、証拠として残りません。
後遺障害の認定は、書類をベースとして審査が行われます。お医者さんに聞き取りをしたり、被害者の方本人の面接をするということは、基本的にはありません。
つまり、診断書に記載されていることが審査の中心となります。
もし診断書にきちんと傷病名が記録されていない場合は、お医者さんに診断書に記載してもらうように頼みましょう。
当事務所にご依頼されている方については、弁護士が責任を持って診断書の内容を確認いたします。わずらわしい書類の手続きは弁護士が行いますので、被害者の方には治療に専念していただくことができます。
(3)傷病名を画像で確認できること
3つ目の要件は、「傷病名を画像で確認できること」です。
具体的には、どのように画像で確認するのでしょうか。
傷病ごとに確認していきましょう。
・左下顎骨々折(ひだりかがくこつこっせつ)、左頬骨々折(ひだりきょうこつこっせつ)、左側頭葉脳挫傷(ひだりそくとうようのうざしょう)
脳挫傷とは、「外傷による局所の脳組織の挫滅、衝撃により組織が砕けてしまう損傷」のことです。
下記のCT画像では、中央部右側に白い丸印が現れています。
これが脳挫傷です。
上記の画像ではよく分からないという方は、下記の画像を見てみましょう。
赤い矢印の先に、小さな白い丸を確認することができます。
このCT画像は、27才の男性のものです。
この男性は、出勤のためにバイクを運転している際に、飛び出してきた自動車と衝突しました。男性は左顔面部を強打し、左下顎骨と左頬骨を骨折しました。顔面の左下から強く衝撃を受けたために、左側頭葉に局在性の脳挫傷の診断を受けました。
当事務所には、年間約200件にのぼる交通事故・後遺障害のご相談が寄せられます。
多くは福岡県内の方ですが、県外からのご相談者もいらっしゃいます。