後遺障害事例

複合性局所疼痛症候群 (ふくごうせいきょくしょとうつうしょうこうぐん) CRPS

1.複合性局所疼痛症候群(CRPS)とは

交通事故で、「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」になってしまう方が数多くいらっしゃいます。
複合性局所疼痛症候群(CRPS)とは、外傷を負った患部やそれに近い身体の部位に神経症状が顕れるものです。
骨折した後、治療をして骨がくっついても痛みやしびれだけがいつまでも続くケースなどが典型です。

2.CRPSの主な原因(仕組み、メカニズム)

CRPSの主な原因、仕組みやメカニズムを説明します。


交通事故で外傷を受けると、交感神経が緊張して反射が高まります。
交感神経は、神経伝達物質であるアドレナリンを多量に放出して血管を収縮させて出血を止める働きをしますし、手足の血管が収縮すると腫脹も防止できます。
このようなことから、人は怪我をすると交感神経を高まらせて、身体を防衛するのです。
また、交感神経が高ぶるのは外傷を受けた際の一時的な現象で、通常の場合、外傷が治癒すると交感神経の反射が消失し、正常な状態に戻ります。

ところが、CRPSの場合、外傷が治癒しても交感神経反射が続いてしまいます
すると、アドレナリンが放出されるために血管の収縮状態が続き、血流障害が起こります。
血液は全身の細胞へ酸素や栄養を送るとともに、老廃物を回収する重要な働きをしていますから、血流障害が起こると、必要な栄養素が行き渡らなくなり、老廃物がたまってしまいます。

また交感神経が緊張状態にあると、副交感神経の働きが抑制されます。すると、便や尿などの老廃物をうまく排泄できなくなりますし、消化酵素、タンパク質の供給が低下し、ブドウ糖を利用するために必要なインスリンなどのホルモン分泌も抑えられてしまいます。

さらに白血球にも影響が及びます。
白血球は、顆粒球とリンパ球、単球によって構成されています。交感神経優位のときは「顆粒球」が活発になり、体内に入ってきた細菌を殺したり細胞の死骸を分解したりして、身体を守ります。
これに対し、リラックスした状態で副交感神経が優位となっているときには、リンパ球が活発になります。
本来は、治癒すると交感神経の働きが収まって顆粒球の働きも落ち着くのですが、CRPSの場合、交感神経の緊張状態が続くため、顆粒球が増加し続けます。すると「活性酸素」が放出されて、必要な細胞まで殺傷してしまいます

つまりCRPSになると、交感神経が暴走して、以下のような影響が出るのです。

CRPSになると・・・

①血流障害
② 排泄機能、分泌機能の低下
③ 活性酸素による組織の破壊

こういった症状が長期間続くと、患部や幹部周辺に「灼熱痛(焼けるような痛み)」が出てきます。
以上がCRPSの典型的な症状です。

ところで、今回紹介した複合性局所疼痛症候群の症状は、従来は「RSD」といわれていたものです。
最近では、交感神経の働きを抑制する「ブロック療法」を実施しても、効果が出ない症例が報告されており、交感神経の異常な高ぶりを原因としない局所痛があることが判明しました。
そこで、1994 年にIASP(世界疼痛学会)において、交感神経の異常な高ぶりとは異なる局所性疼痛をまとめて「CRPS(複合性局所疼痛症候群)」と定めました。

 

3.CRPSの2種類の分類

CRPSには、2種類の分類があります。

3-1.タイプⅠ RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)

1つは「CRPSタイプⅠ RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)」です。
これは、交通事故による捻挫や打撲などの外傷後に発生する症状で、明確な神経損傷がないのに発症し、難治性の疼痛を訴えるものです。

3-2.タイプⅡ カウザルギー

もう1つは、「CRPSタイプⅡ=カウザルギー」です。カウザルギーの場合、画像診断などによって明確に神経損傷を把握できます。
交通事故では、創傷や脱臼、骨折などの後にカウザルギーとなり、難治性の疼痛を訴えるケースが多いです。

4.CRPSの診断基準

CRPSの診断基準には、国際疼痛学会の基準や厚生労働省の基準があります。

4-1.国際疼痛学会CRPS診断基準

まずは国際疼痛学会によるCRPSの診断基準をみてみましょう。

TypeⅠ(RSDについて)

① CRPSを誘発するような侵害的な出来事や、身体の固定を必要とする出来事があった
② 持続的な疼痛またはアロデニアやピンプリックの状態があり、その疼痛の程度が原因となった出来事に比して重く、不釣り合いなこと
③ 疼痛のある部位に浮腫や皮膚血流の変化、発汗異常のいずれかが確認できること
④ 別の疾患によっては疼痛や機能不全の状態、程度を説明できないこと

RSDと診断されるには、少なくとも上記の②~④のいずれも満たす必要があります。
※アロデニアとは、通常では痛みを感じない程度の刺激によって痛みが起こることです。
※ピンプリックとは、安静時に悪化する過敏な痛みです。

TypeⅡ(カウザルギーについて)

① 神経損傷が確認でき、持続的な疼痛・アロデニアあるいはピンプリックのうちいずれかがあり、疼痛の範囲が必ずしも損傷を受けた神経の領域に限らない
② 疼痛のある部位に、浮腫や皮膚血流の変化、発汗異常のいずれかを確認できること
③ 別の疾患によっては疼痛や機能不全の状態、程度を説明できないこと

カウザルギーと診断されるには、上記の①~③をすべて満たす必要があります。

4-2.厚生労働省CRPS判定基準

次に厚生労働省のCRPS判定基準をみてみましょう。
以下の自覚症状に3項目以上該当すること
まず、自覚症状として以下に示す5つのうち3つ以上に該当することが必要です。
それぞれの項目については、いずれかの症状があれば足ります。

自覚症状

① 皮膚・爪・毛のいずれかに萎縮性変化がある
② 関節可動域の制限
③ 持続性の痛み、原因に不釣り合いな痛み、しびれのような痛み、針で刺されたような痛み、知覚過敏
④ 発汗の亢進や低下
⑤ 浮腫

診察時において、以下の他覚的所見に3項目以上該当すること
次に、診察時に以下の5種類の他覚的所見のうち、3つ以上に該当することが必要です。

他覚的所見

① 皮膚・爪・毛のいずれかの萎縮性変化
② 関節可動域の制限
④ アロデニアやピンプリック
⑤ 発汗の亢進や低下
⑥ 浮腫

 

検査による立証方法
CRPSを検査によって証明するには以下のような方法を実施します。

検査による立証

① 疼痛の程度…VAS ( visual analog scale )、 pain scale
② 知覚測定…Neurometer (末梢神経検査装置)
③ 腫脹・浮腫の程度…周囲径の測定、圧痕の有無、指尖容積脈波(プレチスモグラフィー)
④ 発汗の程度…櫻井式測定紙
⑤ 皮膚の血流状態…サーモグラフィー、レーザードップラー検査
⑥ ⑥骨萎縮の程度…単純 XP 、三相性骨シンチグラフィー検査によって骨破壊や骨形成の部位を特定する。特に、テグネシウムを静注した上で 3 時間後に撮影する「 delayed image」という検査が RSD の立証に有効です。
⑦ 神経障害・筋肉の活動状態…手指のグリップ時における動作筋電図、肩関節外転時の筋電図などの筋電図検査

 

5.CRPSで認められる後遺障害の等級

交通事故後、適切に治療を受けて症状固定してもCRPSの症状が消えない場合には、後遺障害として認定される可能性があります。その場合の等級は、以下のとおりです。

5-1.CRPSで認定される可能性のある後遺障害の等級

5-2.基本的なRSDの判断基準

CRPS タイプⅡカウザルギーの場合、画像などによって明確に神経損傷を明らかにできるので、比較的後遺障害の等級認定を受けやすいです。
これに対し、CRPSタイプⅠ=RSD、反射性交感神経性ジストロフィーの場合、明らかな神経障害がないので、証明が困難になりがちです。
RSDの有無を判断するときには、以下のような症状に注目します。
① 関節拘縮、
② 骨萎縮、
③ 皮膚の変化(皮膚温の変化や皮膚の萎縮)
これらの3つの主要な症状が、健側と比べたときに明らかに認められる場合、後遺障害等級が認定されます。

交通事故が原因でCRPSの症状が残った場合、基本的には神経系統の機能や精神障害の系列における後遺障害を認定します。CRPS以外に関節機能障害の原因がある場合には、関節機能障害としての後遺障害認定が行われることもあります。

CRPSによる疼痛と関節機能障害の両方がある場合、併合認定ではなくいずれか上位の等級によって後遺障害が認定されます。

5-3.基本の基準を満たさないRSDの場合

また、CRPSタイプⅠ(RSD)のケースにおいて上記の要件を満たさない場合でも、12級13号や14級9号の後遺障害が認められる可能性があります。
まずRSD特有の所見があってブロック療法などの有効な治療を行い、症状固定時に1つ以上のRSD特有の所見が残っている場合には、別表二の12級13号の後遺障害が認定されます。
この要件も満たさない場合でも、疼痛が残っていることを医学的に説明できる場合、別表二の14級9号の後遺障害が認定される可能性があります。

この場合の「RSD特有の所見」には、関節拘縮や骨萎縮、皮膚の異常の他、腫脹や発汗障害等が含まれます。

以上に対し、後遺障害等級認定時において疼痛が残っていたとしても、その後自然消失する可能性が高い場合、後遺障害として認定されません。

6.CRPSに関する裁判例

交通事故でCRPSになったときには後遺障害認定や賠償金の算定方法について、被害者と保険会社との間で意見が一致せずトラブルになる例が多いです。
以下ではCRPSに関する裁判例をご紹介します。

 2004年7月28日、名古屋地裁判決
追突事故で頚部挫傷となり、 RSDの症状が残った女性被害者のケースです。
被害者がRSDになっていることについては、医師が明確に診断していました。
RSDを前提として賠償金を計算、加害者の保険会社に請求すると、保険会社は「被害者の発言や態度からわかるように、被害者の精神状態に問題があって損害が拡大したので、心因性の素因減額を適用すべき」と主張しました。
心因性の素因減額とは、被害者の精神的な要因にもとづき、賠償金を減額することです。たとえば被害者がもともとうつ病で治療に対する意欲がないために治療期間が長引いたケースなどに適用されます。

裁判所は、保険会社が問題視した被害者の行動や発言は、交通事故から約1年半が経過した症状固定時におけるもので、当時被害者には左上肢部分にRSDの辛い症状が継続していたこと、新たに疼痛の症状が現れて悪化していたこと、治療期間が長期化して賠償問題の話合いも進展せずに被害者が精神的に追い込まれていたこと、RSDには有効な治療方法が確立されていないので被害者が不安を感じても当然であったことなどを考慮し、被害者がRSDになったのは被害者の精神的素因によるものではないと判断しました。
つまり、保険会社による素因減額の主張は認められなかったのです。

この裁判例の1つのポイントは、被害者が医師の診断によってRSDを証明できたことです。はっきりRSDを立証できていない事案では、多くの場合、RSDを否定されます。CRPSの中でも特にRSDは明確な神経損傷がない分立証が困難になりがちだからです。
RSDで後遺障害認定を受けたいのであれば、交通事故直後の段階から、高いスキルと知識を持った専門医を見つけて治療と症状の立証を依頼すべきです。

またこの事例でもそうでしたがRSDの事案で裁判になると、保険会社は心因性の素因減額を主張することが一般的とも言えるほど多数です。RSDは神経損傷がないのに発生しますが、そのような症状が出る原因は、被害者の気持ちの問題だと主張するのです。
実際に、RSDになった被害者は精神的に落ち込むことが多く、医師に勧められたりして精神科や心療内科に行く方が多いです。
しかし、被害者がうつ病になったとしても、それはRSDの辛い症状や先の見えない治療に大きな不安を抱えたからです。上記の裁判でも認定されているように、RSDにはまだ治療方法が確立されていませんし、治療期間も長期化して、被害者に精神的負担が大きくかかります。
被害者がうつ状態だったためにRSDになったわけではありません。
そこで、RSDになってうつ病になったとしても、心因性の素因減額を適用すべきではありません。
相手の保険会社がそのような主張をしてきたら、裁判をしてでも争って適正な賠償金の支払いを受けましょう。

7.CRPSにおける後遺障害のポイント

交通事故でCRPSになったときには、以下のような点がポイントとなります。

7-1.なるべく「治癒」を目指すべき

後遺障害の解説を行っているのに逆説的ではありますが、交通事故でCRPSとなった場合には、後遺障害認定を目指すよりも、なるべく治癒(完治)を目指すべきと考えています

「CRPS」という傷病は、1994 年に世界疼痛学会によって発表されたことによって徐々に知られるようになってきました。それまでは、難治性疼痛を全て「RSD」と診断しており、タイプⅠとタイプⅡの分類もありませんでした。このように、CRPSは研究の歴史も浅く、治療方法も確立されていない難しい症状です。

今でも、以下のような問題をはらんでいます。
① これといって有効な治療方法がみあたらないこと
② 焼けるような灼熱痛が発生するので仕事ができなくなり、日常生活にも支障が出て苦しむ方が多いこと
③ 症状に見合った後遺障害等級が認定されにくいこと

重症事例になると大変深刻な症状が出ますが、思ったように後遺障害認定を受けられないので補償が不十分になりがちです。
交通事故で骨折しギプスを装着する際などには、長期間装着を続けないで早期にリハビリを開始するなど、なるべくCRPSを発症しないように注意すること、怪しい症状が出てきたらすぐにCRPSに詳しい専門医にかかり、可能な限り重症化を防ぐ努力をして下さい。

7-2.CRPSに詳しい専門医を受診すること

交通事故の受傷によってCRPSになる場合、事故当時にいきなり「あなたはCRPSです」と診断されるわけではありません。CRPSは、治療をある程度続けても交感神経の興奮が収まらないことなどを原因とするからです。
当初の傷病名が「骨折」や「頸部捻挫(むちうち)」のケースにおいても、治療を続ける経過においてCRPSタイプⅠ(RSD)を発症することが多々あります。

交通事故後、患部やそれに近い場所に灼熱痛(焼けるような痛み)やアロデニア、ピンプリックが現れて苦しんでいるならば、すぐに専門医のいる病院に行き、診察を受けましょう。初期の段階で専門医が対応すると、一定数の患者はCRPSの症状が改善するからです。対応が遅くなればなるほど症状が慢性化し、治癒は困難となります。
CRPSは治療方法が確立されていない分野とは言え、詳しい医師とそうでない医師がいることは事実であり、早期に対応するのとしないのとでは歴然とした差が発生します。
専門医を探すときには、CRPS(局所複合性疼痛症候群)の外来を受け付けている病院を選びましょう。

7-3.治療費打ち切りについて

交通事故でCRPSになり、早期に専門医による治療を開始できたときには、1年間治療を続けた頃を目安に症状固定することが多いです。早期に治療開始できた場合には、1年も治療を続ければ相当の改善を得られて症状固定しやすいからです。
認定される等級は7級、9級、12級のいずれかです。状況に応じた等級を狙い、主に被害者請求の方法により、後遺障害認定請求の手続きを進めます。

ただしCRPSによって通院するとき、保険会社が治療費と休業損害を最後まで支払い続けてくれるとは限りません。治療期間が長引くと、途中で支払いを打ち切られることも多いです。
そのようなとき、治療費が高額になるからと言って治療を打ち切ってしまったら治るものも治りませんし、入通院慰謝料も減額されて、後遺障害認定すら受けにくくなってしまうおそれがあります。
対応に迷われたときにはすぐに弁護士に相談をして、治療を継続しましょう。多くの場合には、健康保険を利用して通院を継続することをお勧めしています。
また弁護士が代理人となり、保険会社と交渉をすることも可能です。

7-4.的確に後遺障害を立証し、慎重に手続きを行う必要がある

交通事故でCRPSになったときに後遺障害を証明するためには、多種類の検査を受ける必要があります。
たとえば疼痛の程度については治療経過のVASスケール、知覚測定については末梢神経検査装置、腫脹や浮腫の程度については周囲径の測定、指尖容積脈波検査、他にもレントゲン、MRIやCT、可動域測定、筋電図検査などを実施しなければなりません。
後遺障害認定請求を行うときには、ケースに応じて適切な検査を実施し、国際疼痛学会や厚生労働省の判定基準にあてはめながら、綿密に症状を立証していく必要があります。
的確な資料を作成するためにも、CRPSに詳しい専門医にかかるべきですし、後遺障害認定手続きを進める際にはCRPSの症状や立証に詳しい弁護士の手によって進めるべきです。

 

以上のように、CRPSは交通事故後に残る症状の中でも大変困難な症状であり、後遺障害認定請求をするときにも細心の注意と専門知識、スキルが必要ですし、専門医、専門の弁護士による協力が必須です。
当事務所の弁護士は、福岡、九州を始めとして全国の交通事故被害者の方へサポートをしておりますので、交通事故後、疼痛や灼熱痛が治まらない場合には、なるべくお早めにご相談下さい。

当事務所には、年間約200件にのぼる交通事故・後遺障害のご相談が寄せられます。
多くは福岡県内の方ですが、県外からのご相談者もいらっしゃいます。

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