後遺障害事例

脊髄不全損傷|非骨傷性頚髄損傷(せきずいふぜんそんしょう|ひこつしょうせいけいずいそんしょう)

1.脊髄不全損傷とは

交通事故被害に遭った後「脊髄不全損傷」という傷病名をつけられるケースがあります。
脊髄不全損傷とは、脊髄の損傷部位や原因がはっきりしないにもかかわらず、脊髄損傷に典型的な麻痺などの症状が発症する傷病です。
レントゲンやMRIなどの画像診断によっては異常所見を把握できないにもかかわらず、症状が発生するケースが典型例です。
脊髄は人間の背骨の中を通っている中枢神経であり、全身の感覚や各種の機能を司っています。損傷を受けると、反射亢進や筋萎縮、手足の麻痺などの異常が発生します。
通常の脊髄損傷の場合にはレントゲンやMRIなどによって背骨の骨折等の所見を確認できますが、脊髄不全損傷の場合、そうした所見がないため、症状の原因や損傷部位を特定することができないのです。

脊髄損傷でよく起こる症状は、腱反射の亢進や異常反射、顕著な筋萎縮、腕脚の麻痺ですが、麻痺を発症する場合、「脊柱管狭窄症」が影響していることが多いです。脊柱管狭窄症とは、脊椎にある「脊柱管」という神経の束が通る間が狭くなって神経を圧迫する症状です。首の骨である「頚椎」に変性がある中高年の交通事故被害者に発生するケースが多数です。

脊柱管狭窄症の要因としては、以下のようなものが考えられます。

脊柱管狭窄症の要因

 遺伝的な狭窄症
 骨棘形成
 椎間板膨隆
 頚椎不安定性などの後天的な頚椎症性変化
 後縦靭帯骨化症

交通事故の後遺障害認定の場面では、画像所見が非常に重要視されるので、画像所見を得られない脊髄不全損傷の場合には「非該当」となる可能性もあります。
認定を受けられるとしても、神経症状として14級9号または12級13号になるのみで、「脊髄損傷」として後遺障害が認められることはありません。

2.脊髄損傷の診断方法

脊髄損傷の位置や症状の程度を診断するためには、MRI検査を利用します。
損傷を受ける部位としてはC3/4が多く、急性期にMRI撮影をすると、T2強調画像によって「高輝度」を確認できるケースが多数です(写真を参照)。
慢性期になると、T1強調画像によってスポット状の低信号領域を確認できます。その領域が広くなるほど脊髄損傷の程度が大きいとされています。
          

          
また、脊髄損傷では外科手術が施されることがありますが、脊髄の固定術を受けた被害者の場合、MRI所見をとれなくなるケースがあるので注意が必要です。

自賠責の後遺障害認定要件では、MRIのT2強調画像によって上記の「高輝度」が認められることが要求されます。この所見を確認できるのは、交通事故による受傷直後の急性期から約2か月間です。
そこで、脊髄を損傷した場合には、事故後、早期にMRIによる検査を受けておく必要があります。
慢性期になった場合には、T1強調画像によって軟化型損傷を証明しなければなりません。

3.MRI画像機器の精度について

MRI機器にはそれぞれ「精度(解像度)」があり、その度合いによってどこまで正確に異常所見を把握できるかという能力が異なります。
MRI検査機器の精度の単位は「テスラ(T)」です。解像度(テスラ)の数字が大きくなるほど、鮮明な画像を獲得できます。

日本で当初、病院にMRI検査機器が導入されたのは1989年頃ですが、この頃のMRI機器の精度は0.3~0.5テスラです。その後1998年以降には1.5テスラのものが主力となり、現在では3テスラの機器を導入している病院も登場しています。

高解像度のMRI機器を使った方が異常所見を得られやすいので、脊髄損傷の検査を実施するのであれば、なるべく高解像度のMRI検査機器を導入している病院で検査を受けるべきです。
少なくとも、1.5テスラ以上の機器がある病院を受診しましょう。

4.アーチファクトが発生しているケースについて

MRIで撮影を行うとき「アーチファクト」に注意が必要です。
アーチファクト(artifact)とは、人工の産物、つまり本来は存在しないものという意味です。
以下で、アーチファクトが発生する原因をいくつか紹介します。
まず、頚椎などの手術を行う際にはドリルで骨切りをしますが、このとき微少なドリルの鉄粉が体内に残ってMRIの磁場に反応し、画像がぼやけて不明瞭になってしまうことがあります。
また、肺のCT検査をするときには、近くの心臓が動いているために気管支や血管などの周辺組織がぶれて腫瘍のように写ってしまうケースもあります。これと同じようなアーチファクトが脊髄損傷の場合にも発生することがあるのです。
アーチファクトが写るとMRIによって脊髄損傷を立証するのが難しくなってくるので、SSEPやMEP、サーモグラフィー、針筋電図検査などの補助的な診断によって対応します。ただ、自賠責はSSTPやMEPに対し重きを置いておらず、あくまで補助的な立証という位置づけです。中心となるのはMRIなので補助的検査のみによって後遺障害認定を受けることは期待しにくいです
自賠責が後遺障害として認定しなかった場合、訴訟対応が必要になるケースもあります。

5.脊髄損傷で認定される後遺障害等級

交通事故で脊髄損傷となった場合に認定される可能性のある後遺障害等級をみてみましょう。
自賠責の後遺障害認定基準によると、脊髄損傷は「神経系統の機能の異常」として、症状の程度に応じて1級、2級、3級、5級、7級、9級、12級、14級の8段階のいずれかが認定されます。

前方固定術や脊柱管拡大形成術などの外科手術が行われたケースでは、脊柱の奇形や変形を証明することによって「脊柱に変形を残すもの」として後遺障害11級7号が認定される可能性があります。
軟部組織に器質的損傷が認められ、脊柱の可動域が2分の1以下に制限されていれば「脊柱に運動障害を残すもの」として後遺障害8級2号が認定されます。

脊髄の固定術(外科手術)をせず保存療法しか実施していないケースでは、14級9号または12級13号となることが多数です。まれに9級10号が認定されるケースもみられます。

脊柱の奇形・変形が残った場合の変形障害では日常生活や仕事における支障が少ないので、保険会社から「逸失利益」を減らされる可能性があります。逸失利益とは、後遺障害が残り、労働能力が低下したことによって得られなくなった将来の収入です。
裁判をしても、労働能力喪失率を小さくされたり、労働能力の喪失期間を短縮されたりする可能性があります。

また脊髄損傷で後遺障害認定を受けるときには「脊髄症状判定用」という書類が必要です。これは、被害者の脊髄損傷にもとづく症状の内容を詳細に記載する書面で、医師が作成するものです。
自賠責に専門の書式があります。
被害者請求の方法で後遺障害認定を行う際には、医師に後遺障害診断書を依頼するときに脊髄症状判定用の書式も一緒に取り寄せて、作成を依頼する必要があります。

6.脊髄不全損傷=非骨傷性頚髄損傷における後遺障害のポイント

 

6-1.心因性では後遺障害認定を受けられない

交通事故の脊髄損傷で後遺障害認定を受けるには、反射の異常や筋萎縮などの脊髄損傷に典型的な症状を検査によって確認できる必要があります。検査を実施しても異常反応を確認できない場合には、たとえ車いす生活をしている方でも「心因性」とされて、後遺障害としては認定されません。

6-2.MRIによる所見を確認できない場合

交通事故の自賠責保険では、MRIによる検査結果が非常に重視されています。そこで、脊髄損傷になったときにMRI所見を得られていれば、比較的簡単に立証可能です。
反対に、MRIによる所見を得られないまま受傷から2、3年が経過してしまうと、立証が極めて困難となります。
その場合、「針筋電図検査」を実施して神経原性麻痺を証明すると、MRIによる画像に代わる重要な他覚的所見となります。
ただ、神経内科では、陳旧性(古傷)となった脊髄損傷の立証にあまり積極的ではないケースがあります。また、対応してくれるとしても、検査体制が不十分な場合、得られるべき所見を得られないことも考えられます。首都圏や近畿地区、福岡では、比較的協力的な医療機関を見つけやすいですが、地方では適切な検査を受けることに高いハードルが課されるケースもあります。

 

 

脊髄不全損傷となったときには、そもそもMRIなどの画像診断をしても異常を確認できないことが多く、立証に困難を伴います。適切に後遺障害認定の手続きを進め、適切な高い等級の認定を受けるためには弁護士によるサポートを受けるべきです。
当事務所では、福岡を中心に、九州、全国の交通事故にも対応しておりますので、交通事故後脊髄損傷と思わしき症状が出ている場合には、お早めにご相談下さい。

当事務所には、年間約200件にのぼる交通事故・後遺障害のご相談が寄せられます。
多くは福岡県内の方ですが、県外からのご相談者もいらっしゃいます。

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