後遺障害事例

外傷性横隔膜破裂・ヘルニア(がいしょうせいおうかくまくはれつ・へるにあ)

1.横隔膜破裂・ヘルニアとは

 横隔膜は、膜を上下させることにより、肺の気圧を管理していますが、交通事故や高所からの転落などで胸部に強い打撃を受けると、排気が間に合わず、横隔膜そのものが破裂することがあります。風船を踏みつけると割れるような状態です。
 横隔膜が破裂すると、今まで横隔膜によって区切られていた臓器(胃、小腸、大腸など)が脱出することがあり、これを外傷性横隔ヘルニアといいます。
 横隔膜ヘルニアには3つのタイプがあります。

①食道裂孔ヘルニア
 食道裂孔を通して胃が胸腔内に脱出するタイプです。症状は、胃の内容物が逆流して食道炎や胃潰瘍の症状となって発見されるケースが多いです。
 このタイプはほとんどが成人で、レントゲンで食道造影を行えば診断できます。

②後側方横隔膜ヘルニア
 横隔膜の後側方の部分に胸腔と腹腔の間を自由に通じる孔(ボホダレク孔)が開いているために起こるヘルニアです。ボホダレク孔を通して腹腔内の結腸や小腸が左胸腔内に脱出します。そうなると、左肺は虚脱して縦隔が右に偏位して右肺が圧迫されます。レントゲン撮影で診断できます。

③後胸骨裂孔ヘルニア
 胸骨の裏側におこる横隔膜ヘルニアで、左右どちらにでも現れます。大部分が横行結腸が脱出するので、結腸閉塞の症状(腹部膨満・吐く・排便・排ガスがなくなる、腹痛)です。胸部レントゲン撮影で胸腔内に結腸像を認めることで診断できます。

2.症状

 外傷性ヘルニアでは、受傷直後に肋骨下部(心窩部)の強い痛み、嘔吐、呼吸困難、ショックなどの症状が現れます。

3.検査

 胸部XPで、横隔膜との境界がはっきりせず、胸腔内や縦隔内に腸管のガス像を認めます。胃などの管腔臓器が脱出すると、肺内に管腔臓器が映し出されます。
 消化管バリウム造影検査では、より明瞭に脱出した腸管が描写され、確定診断となります。

4.治療方法

 外傷性ヘルニアの治療には、緊急的に手術が実施されます。
 横隔膜は呼吸に直結している部分なので、脱出した臓器そのものによる症状よりも、脱出した臓器によって横隔膜の動きが妨げられることの方が危険です。
 手術によって横隔膜裂孔が閉鎖されれば、予後は良好で、ほとんどは後遺障害を残すことなく改善されます

5.後遺障害認定について

 外傷性横隔膜破裂・ヘルニアであっても、早期に発見され破裂部が適切に縫合されると、傷害を残すことなく改善されます。
 交通事故では、外傷性横隔膜破裂のみの単独外傷は考えられず、多くは脾臓破裂、肝臓出血、骨盤骨折などを合併しています。
 立証の際には、傷害を総合的にとらえなければいけません。上位頚髄損傷と横隔神経の切断は後遺障害等級別表Ⅰ、1級1号に該当します。

 

 

※参考までに、頚髄神経の支配領域を簡単に説明します。

C3=横隔神経を支配しています。切断では自発呼吸ができなくなり、人工呼吸器に頼ることになります。

C5=上腕二頭筋を支配しています。これが傷害されると自力で肘を曲げることができなくなります。

C6=多関節を背屈させます。

C7=手首を屈曲させ、上腕三頭筋を支配しています。

C8=指を曲げる運動に関与しています。

Th1=指を開いたり閉じたりする運動に関与しています。

 それより下位は、運動神経ではなく、感覚神経で評価するのですが、Th4=乳首周辺の感覚に、Th7=剣状突起(みぞおち周辺)の感覚に、Th10=臍部、Th12=鼠径部に関与しています。

 頚髄損傷はC6あたりで発症することが多く、C5が麻痺していないため上腕二頭筋は収縮ができますが、C7より上位の損傷では、上腕三頭筋が麻痺しているため収縮することができず、肘を自力で伸ばすことができなくなります。

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